「美しい夜、残酷な朝」

美しい夜、残酷な朝 オリジナル完全版 [DVD]

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とてもパンチの効いた3作品でどれも面白かったです。


1. Cut
観る前はもっと残酷な描写が多いかなーと構えていたけど、
思ったより少なめでした。
最近、パク監督作品ばっかりなので感覚がマヒしてるかもですが(笑)
タイトル通り鋭い痛みを伴うシーンがすごく鮮烈でしたが、
どちらかというとじわじわとすり潰すような(精神的に)鈍い痛みを感じさせるシーンが印象的で良かったです。
上下関係の逆転という構造を、映画の内側での生活(「映画」に帰る)と重ねて、
映画の逆襲のように見せてるのも面白かったですね。
冒頭の、CGと合わせてるような感じの滑らかなカメラワークも、
映画の内側と外側をシームレスにつなぐ事で、その後の展開に一層の恐怖感を与えててこういう演出も面白かったです。


2. Box
三池崇史監督作品は、前に「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」を観てたので、
こういうしっとりした映画のイメージがなくてびっくりしました。すいません。
ホラーという程怖くなく、残虐さもほとんどなく、ちょっとエロくて情緒があって、
べらべらと余計な説明がなく、綺麗な余白が印象的で素敵でした。
こういう女性っぽい情緒の作品は久しぶりに観たなあ。
夢と現実の境界の曖昧さの演出とか、全体的に明るさを抑えたトーンとか、
耽美とも言える程の役者さんの美しい撮り方とか(双子の女の子のポーズとかすごく綺麗)、
すごく良かったです。


3.Dumplings
3作品の中で一番キツかったのがこの作品です(笑)
不快感を敢えて楽しむ作品だと思うので、グロいのとかダメな人は絶対に観ない方が良いです。
*1
単純に衝撃的な映像に「うええー(泣笑)」って感じで腹の底をかき回されるような感覚を楽しみました。
一方では支配する側は何かしら支配されているという構造が、
「喰う」「喰われる」という演出で描かれてるのかなとも思いました。
こういう物語の源流は多分、楊貴妃とかその辺にあるんだろうなあ。
劇中の若くして「婆」と呼ばれる女性の存在がすっごい怪しげで、
こういう物語が妙にリアルに感じられてしまう中国の奥深さが面白かったです。
あとこれ観た後、当分餃子なんか食べないぞと強く思いました(笑)(原題:「餃子」)

*1:奥さんの出産に立ち会って具合が悪くなった人とか