- 作者: 筒井康隆
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- 作者: 筒井康隆
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そういえば、国内のSF作家さんの作品はあまり読んだ事がなかったなあ。
小説を原作にした映画は見てると思うけど。
というわけで、今回は今さらな感じもしますが筒井康隆さんのこの二冊です。
国内SFベストにはだいたい入っているんじゃないかっていう有名な作品なので、読む前からだいたいどんなものかは知ってました。
それと、筒井さんの作品も以前読んだ事があって、猛毒系の作家さんだな、というのもなんとなく。
そういう前置きがあってもやっぱり「濃いなあ」と思いましたね。
主人公の七瀬が精神感応者(リーディング能力者とも言うのかな)で、普通の人間よりずっと近い距離で人と接する描写が多いせいだと思うんだけど、
なんかもう「いやー!近寄らないでー!」っていう生理的な不快感がゾクゾク迫って来て面白かったです。
七瀬が処女だっていう設定も面白くて、明確な説明はなかったけど、超能力と関係があるんじゃないかなと思いました。
だって、七瀬の危機=貞操の危機なんだもの(笑)
こういう処女に特別な力が宿っているって言う考え方って、神話っぽい感じがします。
神聖な者を犯そうとする者に、災いがふりかかる構造とか。
お話の方は、短い作品で全体が繋がっている構成で、読みやすかったです。
中でも、青春讃歌(若作りの奥さんと老けこんだ旦那さんの家)、紅蓮菩薩(超能力研究者の旦那さんの家)が印象的でした。
こういう身を滅ぼすくらいの深い情念を持つ女性が出てくる話が好きだなあ。華やかさと醜さとか、菩薩と修羅とか、全く逆のものを抱え込んだ女性の佇まいがとても面白かったです。
「ふたたび」の方では、謎の組織対七瀬のような構成で、ちょっとアクションな展開かなと思っていたら、意外にも淘汰の方に話が流れててちょっと驚きました。
こういう「分かりやすい面白さ」をねじ曲げて、別の落としどころへ読者を突き落とすのって難しいんじゃないかなあ、と思います。
これ、筒井さんくらいの人がやるからきっとこんな風になるけど、中途半端な人がやったら「?」で終わっちゃうよなあ。
ラストはちょっと意外でしたが、全体的にマイノリティの孤独感や切なさが溢れてて、面白かったです。
やっぱり超能力ものって、こういう理解されない孤独感とか、誰に言われた訳でもない使命感とかそういうのがあってこそだなあと思います。