「阿修羅ガール」

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)



この作家さんの本は初めて読みましたが、すごく読みやすくてあっと言う間に読了してしまいました。
読みやすい作家さん好きー。
読みやすいんですが、そこに込められている意味がとても深くて、すごく面白かったです。
こういう読みとり能力を必要とされる作品って、不安(読めてんのかって言う)もあるけど、楽しいですね。


で、内容の方は、凄惨な事件を起こした犯罪者、世間では理解されず(というか世間がしない、したくないだけだと思うけど)、
距離を置かれている人間を、普通の女子高生(主人公)の平地にまで持って来て、同じなんだよ、
っていうことを言ってるんじゃないかな、と思います。
というか、逆かな?
多くの人が集まって作り上げている(作ってしまう)怪物(阿修羅)によってでしか、互いを理解する事ってできないかもね、
っていうことにも思えました。
でも最後に神様としての阿修羅を提示することで、その中にもいいことだってあるよ、ということを言ってるんじゃないかな。
女子高生の一人称という文体なのですごくポップな印象なんですが、
言葉ばっかり肥大して肝心な部分が見えなくなっている(作中の「アルマゲドン」とか)そういうリアリティをすごく感じましたねえ。
そういう世の中で、怪物を共有する事でしか繋がれない関係の中でも、この少女のように強かに生きるのもありじゃないかな、
という風に思えました。


作中に映画がちょこちょこ引用されているんですが、女子高生が観る感じじゃないなあ(笑)
けっこう知らないのもあったけど。