「ハーモニー」

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)



前作「虐殺器官」を読んでから、次の新刊を楽しみに待ってました。
(シリーズものではないんですけどね)


本を読むのが遅いんですが、買ったその日に一気読みしてしまいました。
いつもながら、読みやすいです。
お話の構造がすごくハードなSFなのに、それを何度も何度も言い換えや、別の視点を使って丁寧に積み上げて行くんですね。
それでいて、せっかく構築された物語構造を思いっきりひっくり返されたり、反転されたりって言う大胆さがあって、
しっかり没入できる分、すごく面白かったです。
今回、ちょっと変わった形式のテキストが出て来て、これが小説の形式の中でかなり浮いてるんですが、ちゃんと文脈は通ってるんですよね。
ずーっと不思議に思いながら読んでましたが。。。こういう仕掛け、大好きです。
これ、最初読むのと2回目読むのとで面白さが違うなあ。お得だ。
お話としては、管理社会ものということで、そのがんじがらめっぷりがすごく良かったです。
煙草はアレだけど、酒もダメか(笑)
それも清潔で無個性なイメージで描かれてるんですね。そういう世界で拡張現実(オーグ)が展開する様なんてすごく未来的なのに、
そこに広がる無気力な気分が前世紀のダークな管理社会をそのまま受け継いでて、楽しかったです。
SFというか、テクノロジーを扱ったお話の面白いところは、人間が技術にガチガチに縛られてもがく姿だったりするんですが(変態だなあ)、
これはそういう部分でも、他になくハードで徹底してて、そして突き抜けてました。
こんなにテクノロジーに浸食される人類って見たことないなあ。そこに至るまでの
流れもすごく滑らかで、そこに行き着いてしまう必然の積み上げも周到に用意されてて、ラストはただただため息が出ました。すごいなあ。


これ、決して明るい話じゃないのに、何度か飲んでたお茶を噴きそうになりました。ロシア人科学者(笑)
個人的な見どころは、女子3人が屋上でお弁当を食べてるシーンでした。