「SICKO」

シッコ [DVD]

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先のオバマ大統領就任の時に、通ってる英会話教室で話題になったので。もっと早く観とけば良かったなあ。


とても恥ずかしい話ですが、最近までアメリカに医療の皆保険制度がない、って知りませんでした。いやー、普通にあると思ってたんですよね。怪我や病気になったら無料とまではいかなくても、何割かの負担で医者にかかれるとか、重傷の場合には優先して治療を受けられるとか、そういう「普通」が普通じゃない国だったんですね。最初は、アメリカ人って「自分の面倒は自分で見る!」っていう健康管理を自己責任として引き受けるマッチョな国民性でこういう制度は要らないのかな、と思っていたのですが全然違いましたね。誰だって具合悪い時は、お金の心配しないで治療に専念したいというのはどの国も同じでした。


この作品に因ると、五千万人ものアメリカ人が無保険で、まともな医療を受けられないという状態を引き起こしているのは、政治的な構造の問題、もっとぶっちゃけて言えば利権の問題という論旨で徹底していました。そこでまた初めて知ったのが、ヒラリー・クリントン(現在は国務長官)さんが、かつてこの問題に対して、国民皆保険制度を導入しようと計画していたってこと。いろいろあって頓挫してしまったようですが、もしこの人が大統領になっていたら、この問題はどうなったのかなあと考えてしまいました。(大統領選の時にこういうことを知ってたら面白かったのに!)ちなみに、さっきちょこっとオバマ大統領の医療保険政策を調べてみたら、なんだか複雑な政策のようで、厳密には皆保険ではないらしいんですね。こんな政策を立てなければならない程、深刻な問題なんだろうなということを感じました。


こういう複雑で深刻な問題を取り上げながらも、最後まで飽きずに面白く観られたのは、このマイケル・ムーア監督の「ぶっちゃけ」感がストレートで観客目線だからだと思います。突っ込みは鋭いんだけど、妙にとぼけた感じが面白い。たぶん、この人太ってるからだと思うんですよね(笑)アメリカ人らしいユーモアを連発するナレーションや、世間話でもしてるみたいなインタビューはリラックスして楽しめました。ただこういうカジュアルさを取り入れているせいなのか、ドキュメンタリーとしてはちょっとデータに乏しい印象がありました。ちゃんと調べていると思うんだけどね。それと「一市民」目線なので、どうしても全体的な構造が見えてこないのもちょっと残念でしたね。この医療保険で助かっている「市民」も居そうな気がするんですよね。
一方で同じ「市民」目線で、ヨーロッパとかカナダの現状を取材している部分は、差異がくっきりしていてとても興味深かったです。ちなみに上記の英会話教室の講師はカナダ人ですが、自国の保険制度には概ね満足しているようでした。日本も悪くないけどね。ただ日本の場合は制度の問題じゃなくて、人不足の方が先に問題化してるからなあ。






どうでもいいけど、この前テレビを見ていたらハリセンボンの太ってる方が、「アメリカでドキュメンタリーとか撮ってる監督に似てるって言われる」って言ってて、思わず「それ、マイケル・ムーアだよ!」とテレビに向かって突っ込みました。確かに似てる。