- 作者: 田中哲弥,大森望,日下三蔵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/12
- メディア: 文庫
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今年はSF以外の本をもっと読もうと思ってるのですが、やっぱり読んでしまいました。
国内のSF作家さんの作品をちょっとずつ楽しめて、その上一つ一つがしっかりSFしていてとてもお買い得でした。
- 小川一水「グラスハートが割れないように」
SFというよりも恋愛ものとして読みました。大切な人を懐に入れて誰にも見せないように守るというのは簡単なのかもしれないけど、それではきっとダメなんだと思います。ただ守るのではなく、見守ることの優しさがとても素敵でした。
- 山本 弘「七パーセントのテンムー」
サイボーグとか人体のSFで、バリエーションの余地があるのは脳と意識(心)なのかな、と思います。最近、本当に意識って面白いなあと思っていたので、こういう解釈はとても楽しかったです。
- 田中哲弥「羊山羊」
ななめに飛び気味な展開が楽しかったです。文体も軽くて、よく考えたらちょっと引くようなシーンでもあまりつっかからず、さらっと読めました。こういう男性が本音と建前の板挟みになってうろたえる姿が、こっち(女)から見ると愉快でした。
- 北國浩二「靄の中」
ハードボイルド!好きですね、こういう渋くて最後にきりっと締まる感じのお話。読みながらのイメージが、昔の映画のようなモノトーンでした。ハードボイルドの味わいもありながら、しっかりとSFネタを仕込んでいるのがすごく楽しかったです。
- 円城 塔「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」
この本を買おうと思ったきっかけになった作家さんの一人。前に読んだ「Self-Reference ENGINE」がちゃんと理解出来てないような気がして悩んだのですが、なんだかもうこうやって置いてかれてるのが正しいような気がしてきました(笑)冒頭の擬似コードで、宝玉の演算で、涙性で(二リットルくらい泣ける)、にやりとしました。
- 中原昌也「声に出して読みたい名前」
ちょっとよく分からなかったです。あの世っぽい閉鎖空間が印象的でした。
- 岸本佐知子「ダース考 着ぐるみフォビア」
最近何かとメディアに登場しているベイダーさん考察。こんなベイダーさんなら、友達になれそうな気がした。
- 恩田 陸「忠告」
犬って本当にこういうこと考えてそうだな、と思いましたね。このキャラクターは猫ではあり得ないなあ。
- 堀 晃「開封」
ネタの盛り込みも楽しかったのですが、宇宙飛行士というかっこいいキャラクターなのに、「通常空間から慣性航行に移行するとトイレに行きたくなる」っていう、ふつーの設定にぐっときました。ホントにありそうだ。
- かんべむさし「それは確かです」
ショートショートの感想って難しいなあ。星新一さんのショートショートはあまり読んだ事がないのですが、最近NHKで放送しているミニドラマはたまに観てます。あれけっこう面白いんですよね。
- 萩尾望都「バースディ・ケーキ」
そういえばSF漫画ってあまり読んでないなあ、と思っていたところでした。主軸のストーリーも良かったのですが、「購買客の動線を一発で見抜く」という主人公の設定がすごくSFぽくて良かったです。ストーリーにあまり絡まないのが残念でした。
- 福永 信「いくさ 公転 星座から見た地球」
4つのエピソードが絡んでいるのか絡んでないのかくらいの細さで繋がっている微妙さが印象的でした。
- 八杉将司「うつろなテレポーター」
SFを読む前に、知っておきたい学問その1、量子力学。雑学程度だけど知ってて良かったなと思えました。ほんと、量子コンピュータなんて出来た日には失業だなあ(笑)
幽霊が出てくる物語は嫌いじゃないんですが、ホラーは苦手です。でも、SF言葉で説明される「幽霊」がすごく新鮮で楽しかったです。部長がかっこいい。
- 林 譲治「大使の孤独」
短いストーリーの中に、宇宙SFと密室ミステリがぎゅっと詰め込まれてて面白かったです。
この本を買おうと思ったきっかけになった作家さんのもう一人。戦場は遠いところにあると妄信しているけど、本当はこんなにもフラットに続いているのかもしれない、と錯覚させる軽くて底知れない表現が素敵でした。「虐殺〜」のウィリアムズさんがまた登場して嬉しかったです。