「ワルキューレ」



正直に言うと、ちょっと退屈な映画でした。史実を元にした物語は、ネタバレを回避できません。オチで面白さを提供することが出来ない可能性を常に孕んでいるんですね。実際、この映画を観る前に、ヒトラーという超有名人の最期をなんとなく覚えていたので、そこまでの展開をどうやって面白くするか、という部分に期待して観ました。確かにワルキューレ作戦の緊迫感や、ナチス党との支配権の奪い合いの流れはどきどきしてとても良かったのですが、どこか退屈なんですね。他の映画を引き合いに出すのはあまり好きじゃないのですが、「デファイアンス」や「チェンジリング」は史実に基づいていながら、ちゃんと面白かったんです。どちらも私は史実の結末を知らなかったので、そのせいもあるのかもしれないんですが、この二つと「ワルキューレ」の違いは、史実以外のところで語られた物語が面白かったんだと思います。「デファイアンス」ではナチス・ドイツに迫害されるユダヤ人の悲劇をベースにしながら、兄弟の絆を描いていたと思うし、「チェンジリング」では母親の切実な思いと社会正義を描きながら、たぶん現実の在り方の不確かさのようなものを語っていたんじゃないかな、と思います。この映画でも一人の将校が人間として家族を思うことを描いていたのですが、ちょっと中途半端な感じが否めませんでした。史実としてはとても忠実に描かれているのだと思いますが、どこか語りきっていないように思えるんですね。映画で史実を扱う時は、もっと語ってもいいんじゃないか、と思います。史実をねじ曲げるのはダメだけど、事件や事実の隙間にある想像は膨らませてもいい。むしろその膨らませた物語が観たいんだと思います。事実だけ知りたいなら資料を見ればいいのだし。
ストーリーはちょっと残念でしたが、通信局のガジェットがなかなか良かったです。ああいうところではエニグマは使わなかったのかなあ。通信局が出て来るたびに探してしまいました。それと観終わってから気づいたのですが、ナチス・ドイツは禁煙を国家的に行おうとした国だった(と本で読んだ)ので、喫煙シーンは反ナチのメンバーだけのシーンだったのかも。