「消されたヘッドライン」



物語を見たり聞いたりするとき、そこによく構造をイメージする。物語とはフローだから、その対称となる構造があるはずだと思う。物語が進むに連れて、構造が明らかになって行く。隠されていた秘密が明らかになると、構造に光が当たりその実体を浮かび上がらせる。でも、その光のあたり方をほんの少しずらすだけで、全く違う姿を見せる事がある。特に複雑で巧妙に考え抜かれた構造は、たった一言や役者のさり気ない演技をきっかけに、構造を反転させる事が出来る。いわゆるどんでん返しというやつだけど、ポジがネガにまたはポジがネガに変わるように、そこまでの物語すべてが反転する瞬間、これだと思う。この醍醐味。陰謀を扱うなら、やっぱりこのくらいはひっくり返されたい。


ここからネタバレます。




アメリカを揺るがす巨大な陰謀」という大風呂敷は、PMCのことでした。MGS4をやった人ならもう分かるよねっていう。本当にあのゲームやってて良かった。海外で無法を働くっていうのは現実のニュースを調べた事があるし、実際問題になってるみたいなんだけど、映画ではもう一歩踏み込んでさらに危機感を作っているのが良かったです。この映画のPMC、ポイントコープのもしかしたらモデルになったのかなっていう(個人の憶測だけど)実在の企業があるんですけど、海外だけで活動してるのかと思ったら、災害救援活動(カトリーナ)もしてるんですね。こういうリアリティの盛り込み方が、かなり調べ上げている感じで好きです。最後に主犯との関連が曖昧になってしまうあたり、なんだかすごく黒いものを感じて妙にワクワクしてしまいました。新聞記者のカルを演じた、ラッセル・クロウはこの前見た「グラディエーター」ではしゅっとしたおっさんだったのに、この映画ではものすごく太ってしまいましたが、旧友達とのつながりと真実との間で揺れ動く様が伝わって来て素敵でした。彼はこういう人間味丸出しのキャラクターがとても良く似合いますね。あと、編集局長(ヘレン・ミレン)の上品さとたくましさを兼ね備えた台詞の言い回しにぐっときました。日本語訳はけっこう抑えめだけど、実際かなりがーがー言ってるように聞こえましたね。ビジネス会話で「F*ck you very much!」はあり得ないわあ。