「スター・トレック」



大きいものが動く時、なぜかそれに心を奪われてしまう。大きな船舶や飛行機、SFならロボット、そして宇宙船。人の手で作り上げた構造物が動くとき、「当然動くだろう」という理屈と「動いてる!」という感覚が同時に存在している。そこにある感動は、自然が大きなものを動かす時のエネルギー、たとえば火山が爆発して風景を一変させることとは、少し違う。人間は自分自身以上の大きな機構の挙動を目撃するとそこに何かを想像してしまうんじゃないかと思う。自然に対しては、そこに制御出来ない諦めと畏れを感じているのだろう。でも、自分自身で作り上げた構造物は一応制御可能だ。それでも、やっぱり条件反射で感じてしまうのかもしれない。何か、すごいことになっているぞ、と。自分自身が作ったということも忘れて。人間が面白いなと思うのはそこにある。自分自身を超えるほど、大きなものを作り出してしまう能力。そしてそれを使ってみようと思う強い好奇心。冒険映画に必要なものは、きっとこれだけだ。あとはほんの少しのロマンスがあれば、他にはなにもいらない。


その映画が面白いかどうかは、最初の15分で決まるそうです。007なんか、オープニング前のシークエンスでいかに惹き付けるかでほとんど決まる映画もあるし。その点においては、かなり「つかみ」の良い映画でした。全編を通して、一番感動したのが始まってたぶん10分くらいの冒頭の救助シークエンス。普通ならさて、どんなもんかなとまだまだ構えてる時間帯で既に頂点に達していたので、あまりの早さに呆然としました。私は往年のファンという訳ではなく、辛うじてTV版(新スタートレックかな)を2、3回観た程度だったのですが、ここで一気に引き込まれました。物語がどうのというより前に、映画をきちんと見せているからだと思います。最低限の状況説明だけで、あとは映画本来の画と音楽で見せるやり方で展開させて行くのですが、ここを観てある意味映画というのは動く「絵本」でもあるんだな、と思いました。
登場人物で一番良かったのが、チェコフでしたね。天然で軽くどじっ子なのに、ロシア訛りの英語で頑張る姿にかなりぐっと来ました。