「ターミネーター4」



機械がもし生命体として、それ自体のサバイバル能力を柔軟(ソフト)に高度化していけば、いずれは人間と同じ思考回路にたどり着くだろう。人間が自分自身の弱さを補うために道具を使い始めて、自分自身を滅ぼすような力を手に入れて、それでもまだ強さを得ようとするなら最後に残っているのは、自分自身を強力(ハード)に固めることだ。そうすると、この両者はどこかの一点で交差する。ハード(機械)がソフト(人間)に近似して、ソフト(人間)がハード(機械)に歩み寄る。その交差の瞬間、この映画はクライマックスをむかえる。
そしてこれは、「審判の日」以後のお話でもある。審判の日以前(2の時点では1994年)、核は世界を終末に導く、とても重要なアイテムだった。物語の中で、核は終末のイメージを具体化する装置として導入されていた。今回、2018年時点では、核はそれほど重要な意味を持たない。確かに、核によって滅びかけた世界を、今度は核を使って危機を脱したという見方はできる。けれど、印象としては「少々威力の強い爆弾」程度だ。もう核が終末を意味していない*1。だから「生存を脅かす」という切迫感はアクションシークエンスで良く出ていたけれど、「世界を脅かす」という部分に強さがなかった。もう、世界を脅かすほどの重要なものが存在しないから。
「審判の日」以前のお話は、その日を消失点とした広がりを描けた。2のエンディングで、真っ暗な先の見えない道路が流れる。その先にあるのは審判の日だ。けれど消失点の向こう側に来てしまった世界では、ぼんやりと広がる平面だけがそこにある。戦いが終わらない、繰り返しの世界。それが、この映画のエンディングだ。


映画について:
アクションシークエンスの中でも、やっぱり乗り物を使ったアクションが良かったです。特にヘリの執拗なショット、墜落を最後まで見せるというカットが新鮮で良かった。画面酔いしやすいんですが、カメラが安定していて大丈夫でした。それとバイクとトラックのアクション。ここは2の反転になってて、観ながらにやにやしていました。バイクの疾走感もすごく良かったし。ターミネーターの中では、巨大ターミネーターが一番ワクワクしました。あの微妙に効果的に威圧感のある高さとか、関節動かす度に鳴るギーギーした音とか、アホみたいな火力のミサイルとか、もうたまらないね。もっと効率のいい形体があるだろうに、っていうヤボったさも加わって最高でした。
マーカス・ライトですが、彼はジョン・コナーのカウンターパートなんですね。ジョンの方もなんだけど、どちらももうちょっと葛藤する部分が観たかったです。マーカスの自分の存在に疑問を持つところや、ジョンの機械を嫌悪しながらも信用せざるを得ない心境が、ストーリーの中でもドラマチックなところだと思うのですが。こういうドラマ部分はベタなくらいがちょうどいい。それと、オープニングクレジットがすごくカッコ良かったです。これ、Imaginary Forcesなんだなあ。ソースプログラムみたいなデザインが、ターミネーターの制御ロジックをイメージさせて良かったです。CかLISPかしら。**とかポインタみたいでたまらないな。今年観た映画の中で、一番カッコ良かったです。

*1:物語世界の中でという意味で