「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」



ヒデラジ「大人の本棚」でも取り上げられていて、『身長150cmのちっちゃい女性が大暴れするミステリー』というふれこみと、予告がけっこう面白そうだったので観てきました。


小説の方はまったく読んでいなくて、ネットの情報もそんなに知らないで、本当にぽっと観に行ったんですが、ミステリー部分がとても丁寧に描かれていてすごく楽しめました。予告編の中で、30人くらいの集合写真を提示しながら「この一族の中に犯人が!?」というシーンがあって、「こんなの覚えられない!」と降参しそうになりましたが、本編ではほどよくざっくりと削られて、ミステリーをあまり読まない私でもなんとか人物関係を押さえておく事が出来ました。製作がスウェーデンで、現地の人名や土地名なんかは、聞き慣れない言葉のせいかなかなか覚えられないんですけど、役者さんの顔でなんとかそこはクリアしました。


コンピュータを多用した現代的なコミュニケーションと、孤島を舞台にした上流階級の娘の失踪事件という古風なミステリーの組み合わせがすごく良かったです。ラングトン教授シリーズ(「ダヴィンチ・コード」「天使と悪魔」の人)と比較されそうな感じもあるし、私も観ながらちょっとそれを思ったりしましたが、こちらはどちらかというと謎そのものをいかに面白く主人公たちに解決させるかに重点をおいているような感じで、観客と物語をつなぐ主人公のミカエルが、本当に普通の人らしい感覚で、カウンターパートのリスベットの強烈さを和らげながら、謎に振り回される役どころがとても面白かったですね。このリスベットがまたちっちゃいのにやたら凶暴というか、猫飼ったことないけど、水を嫌がる猫にむりやりシャワー浴びせたらきっとこんなんだろうな、っていう声で叫ぶわ暴れるわで、彼女が出て来る度に異様な緊張が画面に漲っていて新鮮でした。それでいてすごく頭良いんだよね。コンピュータの天才という部分もなかなか面白くて、なぜかみんなMac OSだと思われるような小粋なインタフェース使ってるけど、やっぱりハッカーコマンドラインだよね(笑)


物語全体としては、男の人の性というものにまつわるお話だったんじゃないかなと思います。獣のような野蛮な一面と、それをコントロールしようとする良心が、きれいに配役に分けられていて、その性(さが)に振り回される女性もきちんと役まわりをバトンタッチしながら一貫して描かれていたように思います。女性がどんなに振り回されても、その男性の劣情というものはこの世界にはどうやったって存在しているし、男性と愛し合う時にはそれと向き合わなければならないというリスベットの姿勢が一番美しいな、と感じました。


この映画、さっそく続編も作成されてるみたいで公開が楽しみです。予告編でリスベット、ちょっと髪長くなってた。