「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」



「景気の悪いときにこそ」


もともとはゲームが原作の作品ですが、物語は映画オリジナルだそうです。ゲームはやったことないけど、(ゲームセンターCXの)有野課長のプレイは観てました。タイムアップがかなり厳しいゲームで、そこらへんのギリギリ感は上手く出ていたなあ。


ブラッカイマープロデュース、と言うとちょっとした映画好きを自称する人ならすぐさま「あんなもの」と鼻で笑ってしまうのかもしれません。「パイレーツオブカリビアン」や「アルマゲドン」など大味の演出が多くて、よく言えば娯楽大作、悪く言えば頭の悪い作品が多いように思います。*1それは私も否定はしません。だってこの作品、呆れるほど頭が悪い。映画という虚構に現実世界の教訓やメッセージを込めるのはとても大事なことだと思うけど、現実世界をそのままなんの加工もせずに持ち込んでどうするというの。
でもだからってこの映画がダメだなんて全然思いませんでした。なんなら前のめりになって画面に食いついて観ていたくらいですから。ストーリーは文字通りお話にならないけれど、アクションや役者、演出(デジタルも含む)にふんだんにお金をかけた贅沢さをたっぷりと楽しみました。映画は演劇とは違って「そこにあるもの」を映すことで世界を構築します。そしてその「そこにあるもの」に一つでもチープなものが混じっていると、とたんに映画が安っぽくなってしまう。いくら演技力の素晴らしい役者でも、それをカバーすることは難しい。まあ昨今はデジタルエフェクトという便利なものがあるので、多少の安っぽさはごまかせるようになりましたが。特にこういう娯楽大作と呼ばれる作品にはその安っぽさが命取りとなってしまいます。せっかく大きなスクリーンで観てるのに、爆発やアクションがしょぼかったらつまらないですよね。だからそこに金をかける。リッチな映像を2時間たっぷり観せること。それがこういう娯楽映画の最大の目的なのだと思います。
全世界どこを見回しても不況不況、贅沢なんて言葉、どこからも出てきません。映画を見に行くときだってレディスデーとかレイトショー、割引オプションなんかを活用してやりくりする日々。いんじゃないかな、と思うんですよ。映画観てるときくらい、なあんにも考えないで贅沢な映像と、薄っぺらい物語に没頭してしまっても。本来、映画の娯楽としての機能はこういう部分にあると思うんですね。まあそりゃあ物語にも厚みがあった方がいいとは思うし、こういう映画ばかり観たいとは思わないですが。少なくとも上映中の2時間、人を飽きずに楽しませるという点において、この映画は娯楽の機能はきちんと果たしているように思いました。

*1:でも「ブラックホークダウン」とか関わってたりするから一概には言えない