「ツナミ」



正直に言って、映画全体の印象はほとんど「2012」のアジア版でした。もっと言ってしまえば、「2012」ほどの圧倒的な迫力もなかったですね。ハリウッドほど贅沢にデジタルイメージを作り出すことが出来ないし、その分を補うアナログなアクションやカメラショットはとても工夫されていたけど、一度「すごい」と思わせた上限を越えることは難しいなあと、観ながら思っていました。
だからこの映画はつまらなかったかというと、そんなことはなくてとても面白かったです。災害映画の面白さはドラマです。日常では語れない、非日常に置かれた時に初めて立ち現れる物語を、この映画は「普通の人々の生活」という次元に置くことでぐっと感情移入の距離を縮めているように思いました。だから前半の個々のエピソードはとても丁寧に描かれているんですよね。ただちょっと盛り上げに走りすぎてお粗末なところもありましたが。それに登場人物たちもとても「普通」でした。主人公マンシクのビジュアルなんて、昭和の時代から来ましたみたいな感じなんですよね。出てくるおばちゃんも、おじさんも主人公を取り囲む友人関係も、みんな映画のスクリーンのアップで映えるビジュアルでは決してない。それは役者さんの魅力不足という訳ではなく、むしろそういう「普通の人々」の顔、その顔がどうしようもない自然の力の前で声の限り絶叫したり、静かに絶望したり、恐怖の底からふりしぼるように笑顔を見せたり、そういう顔の一つ一つがすごく心に迫ってくるんですよね。これは「2012」にはなかった感覚で、アジアならではこその、感情表現の近さからくる感動なのかなと思います。
一番感動したのは、主人公と確執のあるおじさんが身を挺して主人公を助けるシーン。あれ、家で観てたら絶対主人公と一緒に「おじさーん!」って叫んでいたわ。