「マルドゥック・スクランブルー圧縮」

沖方丁さんの小説「マルドゥック・スクランブル」3部作のアニメーション第一弾。だいぶ前に発行された小説を読んでいたので観に行きました。

最近また改訂新版(イラストなしのハードカバー)で読み直しているのですが、映画の方は一時間ちょっとの時間の中でとてもうまく削られていて、展開のスピード感が高まった感じでした。この削り方はすごい。観客がぎりぎり理解できる程度に台詞を削ぎ落として、心象や物語の外形(世界感や設定など)を絵や音のように一瞬で伝わる転送速度の大きいメディアを使ってみごとに圧縮しております。すげええ。
アニメーションならではのキャラの動きやデザインが観られるという部分も、自分が小説を読んで持っていたイメージとの相違が楽しめました。あの変態五人衆のイメージは概ね合ってたかなあ(笑)ボイルドはやっぱり別シリーズの「マルドゥック・ベロシティ」(スクランブルの前日譚)の表紙のイメージがあるから、長髪じゃなくて五分刈りだったけど、映画版の全体的に白っぽい冷たい虚無感のあるビジュアルはいいなと思いました。バロットの声はもうちょっとハスキーなイメージがあったのですが(小説のあとがきでビジュアルイメージがナタリー・ボートマンってあったせいかな)、こちらの少女らしい儚さの漂う、線のはっきりしない声(林原めぐみさん)も、テーマである「選択」の危うさや揺れが出ていて好きでしたね。一番心配していたのは、ウフコック役が八嶋智人さんで、バラエティでしか彼のことを知らないので、あのキャラでウフコックかあ、と思っていたのですが、いやいやいや、そんな心配無用でした。ウフコックの真面目で楽観的な性格が上手く出ていたし、バロットから告白されて慌てる時の演技はもう最高でしたね。

次回は私の好きなあのキャラが登場するのかな?とても楽しみです。