攻殻機動隊 Solid State Society 3D

ネタバレではないけど偏見が含まれます。***

生身の脳を電子部品で強化する電脳化によって人間がより一層ネットワークに接続され、義足や義手という交換可能なパーツが全身に施される義体というものが可能な未来。それでいて、人間の生活や文化は現実社会とあまり変わらない世界。公安9課という政治的、社会的な危険を速やかに排除する政府機関のメンバーである、トグサやバトーはテロリストを追う中で「傀儡回し」なる人物の存在を突き止めるが、そこには2年前に9課を去った草薙素子の影があった…。

この作品と差分を採るべきなのは、やはり映画「攻殻機動隊 Ghost in the shell
なのだと思います。映画版では素子はネットの中で「人形使い」なる パーソナリティと出会います。それとの出会いは素子の新たな誕生の物語でもあったと思います。(2.0の方がよりその側面が強く感じます)一方、SSSで素子は「傀儡回し」なるパーソナリティと出会います。この正体は明らかにされていませんが、私はStand Alone Complexという現象が素子の同位体に近い形で現れたものなんじゃないかと思うんですね。このStand Alone Complex(SAC)というのは、TVシリーズの方で描かれていた、ネットにつながる事によって発現するパーソナリティであり、TVシリーズはその根源と生成を探る過程だったのではないかと思います。特定の個人像ではなくある文脈で描かれる架空の、けれど具体的で明確な意思を持った身体不在のパーソナリティ。それが「素子」という具体的な身体を持つ個人に近い形で現れた。このエピソードは(今手元に確認できるものがないので不確かですが)漫画版の方にあったはずです。そうすると、このエンディングは素子自身の自分探しの結果なのではないか。組織を離れ、個人的に事件に介入しながら自分の有り様を探していた彼女の、一つの答えなのではないかと思います。それが社会(Society)の媒介者というもの。ネットワークとは個々のノードが接続を確立したものだとすると、この媒介者というのはさらに上位の社会と社会の接続を確立するものなのではないかと思うんですね。素子の見つけたものとはこの社会間の密使であり、彼女は今後そのように活動するのかなあと思います。
この結末が実社会に還元するものをずっと考えているのですがなかなか難しいですね。ネットワークというのはただの状態であり、その基本的な構造は「接続している」ということだけなんですね。ネットワークはつながるだけで、「何を」「どう」つなぐかはまるで関係がない。この物語のように独身の老人と、本来であれば接触する機会のない子どもを結びつける。そこに意味を見出すことは、人間のすることなんだと思います。夜空の星の点をつないで星座を見出すとの同じことで。だから社会と社会を結びつけることになんらかの意味を見出すということは可能なんじゃないかなと思うのですが、それ以上の意味はこれからまた考えていこうと思います。

実はDVD版を持っているので、内容自体は知っていました。その中でも電脳内の3Dイメージが飛び出して観えたのはこの作品らしくてすごく良かったです。そうそうこういうの観たかったよ!ちょっと残念だったのは、あまり電脳内の描写が少ないところ。もっとあっても良かったのに…。それとタチコマがやっぱり可愛いかったです。うちに一台欲しい。
それと今回なぜかトグサさんがとても素敵に見えてしまって、このシリーズで一番好きなのバトーさんなのに、ああどうしよう。トグサさんみたいな旦那さんいたらすげーカッコいいと思いませんかね。あああ。それとこの作品で一番わくわくしたのはスナイパー対決でした。サイトーさん、なまらかっけえ。敵のおっさんも渋くて良かったです。