マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)
- 作者: 冲方丁,寺田克也
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/05/10
- メディア: 文庫
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全身を過剰なテクノロジーで武装し自分の身を守る少女バロットと万能道具として開発されたネズミのウフコックの物語「マルドゥック・スクランブル」の前日譚や、ウフコックと虚無を抱えた元兵士のボイルドを描いた「マルドゥック・ヴェロシティ」を俯瞰する物語などが収録された短編集。
スクランブルにまつわるショートストーリーは「104」が良かったです。短い中にヒロインの過去への確執やそれに関わるウフコックの生真面目さがきちんと収まっていて、しっかりした「スクランブル」の味が楽しめました。軟弱で頭脳戦担当(だと個人的には思ってる)のドクターイースターが冗談のような不動産交渉をしながら、しっかりと戦闘に参加しているシーンが「スクランブル」にはあまり見られなかったところで面白かったですね。いい加減で天才肌のドクターらしい戦い方で好きでした。
「ヴェロシティ」本編はものすごく特殊な文体でちょっとむむむと思いながら読んでて、結局敵味方ものすごい数のキャラが死んだっていうことしか覚えてなかったです(笑)いや、なんとなくボイルドの虚無へ至る過程だったっていうふうに思ったのはあったかな。この短編もその文体を踏襲していてちょっと読みづらいけど、その詩的な表現の中に壮絶なエネルギーとスピードが込められているようで内容をよく読むというよりも墜落の風景を思い描きながら読みました。そういうのも楽しいけど、このヴェロシティも普通の文体で読み直したいな。
スクランブルの後日を描く「アノニマス」にまつわる短編「Preface Of アノニマス」は、映画の予告のような印象的なシーンから始まり、このシリーズの魅力でもある変態なキャラたちをざっくりと紹介していくという構成でかなりわくわくしました。いやーこのマルドゥックシリーズの面白さって、敵も味方もものすごい変態が大量に投入されてそれぞれ変態な技を繰り出して変態な技で見切って変態な理由で殺し合うってところにあると思うんですよね。この「アノニマス」でも質・量ともにこれまでのシリーズに引けを取らないみたいですごく楽しみです。