コクリコ坂から

観て来ました。

60年代の海辺の街というノスタルジックな風景のなかでキャラクターがきちんと泣いて笑う、一つ一つの情緒がとても丁寧な映画でした。このゆっくりとしたテンポはかなりぎりぎりの遅さなんじゃないかなと思います。日常化した行為を一つ残らず拾い上げる冒頭のシークエンスや、時々画面がパン(平行移動)する昔の日本映画のようなカットは、逆に新鮮な感じがしました。そう、この映画作りはとても古風で実直なのに、なにかが新しいんですよね。
例えば、主人公の少女海(うみ)と年上の男の子の俊との関係は、元々少女漫画が原作らしいのですが、そういうメロドラマな雰囲気で展開していきながら、俊は劇中でくだらないと一蹴してしまうんですよね。深刻な告白のシーンでも、どこか重さが抜けた空気が漂っていて、あっけからんとしてしまっている。でもなにかそれが妙に現代のメロドラマになれない、あっさりとした恋愛の雰囲気を上手くつかんでいるように思えたんですよね。だって、冬のソナタはあれはあれで良かったけど、あんな風に大袈裟に泣いたり喜んだりあんまりしないですよね。それぞれの日々をやり過ごしながら、その中でちょっとした触れ合いにどきどきしたり、気づかない小さな傷をつけてしまったり、演出はとても少女漫画的だけど、普通そうだよなという感じがして、そういう一つ一つをきちんと積み重ねているように思いました。
それで最後にその積み上げがどーんと大きなカタルシスにつながるか、というとそうでもなくて、最後までその姿勢を崩さないんですよね。物語もハッピーエンドだと思うけど、この二人も恋人どうしというよりは親愛に近い感情をお互いに抱いているような気がして、そういう曖昧な関係性というのも現代の直接的な恋愛感情を回避して間接的なものを選んで行く傾向(があると思っているのですが)に近い感じがしました。