モールス

スウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」のミステリアスな少女を映画「キックアス」のクロエ・グレース・モレッツが演じるリメイク作品です。

スウェーデンからアメリカへと舞台を移して、さぞかし阿鼻叫喚の流血惨事なものになったんじゃないかと、どきどきしながら観に行きましたが意外にも元映画に忠実な、ゆっくりとしたテンポで凄惨な描写を極力ぼかし、主人公の少年と謎めいた少女との交流を中心に描いていて良かったです。
ただ、小道具や台詞で表現される記号的な部分まで同じような感じがして、あまり二つの映画の差異から見出せることは少なかったですね。うーん、まるっきり二人の関係性を変えてしまうのは、こういう繊細なストーリーでは良くないとは思うけど、舞台をアメリカに移したことで見出せるものはあまりなかったような気がします。ああ、そういえば、元映画にはなかったと思うけど、殺人事件を捜査する警察官が犯人を悪魔崇拝者じゃないかと当りをつけるシーンがあって、小さな街の閉鎖的な独特の空気を上手く生んでいたんじゃないかと思います。一方で主人公のオーウェンの母親は、新興宗教らしい教義にどっぷりと漬かっていて(それが両親の離婚の原因となってオーウェンの心を暗くさせている)こちらも同じように狭い世界感を表していたように思います。
それと元映画では言及しなかったけど、この映画は少年の目線で展開しているんだけど、少女の目線で見ると面白いと思うんですよね。*↓にこの件のネタバレ感想があります*
元映画を見ていて結末を分かっているせいか、元々ゆっくりした映画なのかは分からないのですが、若干テンポがゆっくりでした。アビーとオーウェンの二人がジャングルジムで少しずつ心を開いて行くシーンはこれでも良かったけど、他はちょっと間延びしてしまってううーんとなってしまいました。展開はもうちょっと早くても良かったな。凄惨なシーンをはっきり見せずぼかしてみせる、カメラで言うと被写界深度を浅くして肝心の部分をうまく隠し、恐怖を煽るというよりも得体の知れない雰囲気に持って行く画面設計はすごく良かったです。これはいい演出だなあ。ホラーというよりもどこか物悲しいロマンスという感じの映画にぴったりだと思います。怖がりさんでもちゃんとお話に没頭できるしね。


ネタバレ




少女アビーは(一応)保護者のトーマスと共に長い年月を生きてきたけど、年を取らないアビーに対しトーマスはどんどん年老いて行くわけです。で、アビーという子は200年以上生きているらしいので、こういう保護者の役割をしてきた人物はトーマス以外にも居たんじゃないかと思うんですね。トーマスはアビーの世話に疲れ果てて死んでしまうけれど、オーウェンはその役を務める人間としてアビーに選ばれたんじゃないかとも思えます。まあアビーはそんなに狡猾な悪い子じゃないと思いますけど(笑)この一方が年を取らない問題は、ヴァンパイア映画のトワイライトシリーズでも物語の中核を担う問題で、この映画ではその問題をループを描くように描いているんじゃないかと思いました。