ツリー・オブ・ライフ

三人の兄弟と優しい母、そして厳格で理不尽な父というアメリカの一家の小さな歴史と共に、地球上の生命の進化や宇宙の様態を描いた映像作品。

何年かに一度はこういう映画に出会うような気がします。まったくとっかかりがなくて、どうにもこうにも理解できない映画。劇中、アメリカの片田舎の物語から宇宙空間へとシーンが飛んだとき、正直あーどうしようと思いました。困ったな、この映画わかんない。
この映画に登場する家族の物語は分かるんですよ。他人には厳しくて自分には甘いってことがぜんぜん理解できない父の、それでもなんとか家族を養って出世しようとする気持ちも、そんな父親に抑圧されて反発しながらも父と同じ行動を模倣してしまう長男や、かつて父親が夢見ていた音楽家の才能を見せる次男、そして従順な三男。父を中心にして家族の関係がゆっくりと歪んで行くのですが、そういう時自分がなにか正しくないと感じるときに、彼らは神に問いかけるんですね。これも私は特定の宗教はないけど、困った時に神頼みするってくらいは想像できるんですよね。そういう現実的な物語の部分は無駄に盛り上がりをみせない淡々としたカットで繋いでいて面白いなと思ったんですが、神に問いかけるシーンなどが星雲などの天文映像だったり、マグマの噴出だったりして、この自然的、宇宙的シーンはどうすれば家族の小さな悲劇に結びつくのか、すごく読みにくかったですね。
映画の中ではヨブ記の引用があるのでその宇宙的なシーンの読み解きはキリスト教などの文脈で読むのがいいのかもしれないけど、私はそういうのがよく分からないんですよね。でも、そういう特定の宗教観なしに観る事もできるんじゃないかと思いました。神でもなんでも名称はどうでもいいんですけど、この世界、宇宙って人間が考えている以上の仕組みがあるように思うんですよね。自然現象なんて人間がいくら考えても、必ずそれをひっくり返す。宇宙は調べても調べても次から次へと新しいことが見つかる。それが善意か悪意かという以前に、そういう仕掛けのようなものって多分あるんだ、というのが私の最小の宗教観のようなものなのですが、この映画ではそれを絵的な組み合わせで表しているんじゃないかな、と思いました。
例えば、映画の中で風が吹いているのを表現するのに、旗をはためかせたり砂を飛ばしたりして「流れる風」を表現するんですが、それを荒々しい自然や神々しい宇宙や、そして生活している中で身近に囁かれる祈りの言葉として、大きな仕組み=神として表しているんじゃないかと思うんですよね。
確か劇中に教会や引用はあるけど、十字架とか分かりやすいシンボルはなかったような気がします。(いやあったかもしれないけど)
映画の手法で描いた宗教画のような映画だったのかもしれません。うーん(笑)