E.G.コンバット 3rd

E.G.コンバット〈3rd〉 (電撃文庫)

E.G.コンバット〈3rd〉 (電撃文庫)


月の中心部に存在した謎の空洞から生還した、おちこぼれ部隊の5人とその教官のルノア。無事に元の生活に戻ったかに見えたが、宇宙外来生物プラネリアムと交戦状態にある地球からの音信は人知れず途絶え、状況は謎に包まれたままだった。そんなルノアの元に地球に居るライバルのラセレーナからメールが届く。いつもの嫌がらせだと片付けようとするルノアは何かひっかかりを覚えてそのメールを調べて行くうちに、その何気ないメールに潜むメッセージを見つける。

このシリーズ、全4巻の予定だそうですが現在刊行されているのはここまで。あらー。どんな事情があるのかは知らないけど、面白いのにもったいないな。
さてさて、物語は途中までなので予想をはさみながらの感想です。前回までにおちこぼれ部隊の5人+ルノアが泣いたり笑ったりどたばたしながら成長していく明るく楽しい一面がある一方、その背景の世界状況が徐々に真っ黒な口を開いて行く暗黒面(笑)が描かれ、そのキャラクターと背景のギャップに対して「これがライトノベルか」なんて勝手に思いました。今作もそのギャップは健在で、というかますますその差が開いて、このキャラクターでこんな状況を演じさせるんだ、と驚きました。その最たるものが、5人に新たに加わったキャラクター、カデナです。彼女は当初から5人のライバルとして登場していましたが、ここに来て5人の側に移った。で、彼女に降り掛かる災難というか運命がなんだか飛び抜けて過酷なんですよね。前作で、5人とルノアは月の真ん中に空いた空洞から命からがら生還する、という危機を経験しているんですよね。これはこれで(このキャラクター像で演じるには)過酷すぎるんじゃないかな、と思ったんですが、この一連の出来事はこれから起る何かへの準備であったと思うんですね。そしてカデナだけがそれを経験していない。今作はルノア+5人+カデナが、そのスタートラインに立つためのものだったのではないかと思います。
で、これから起る何か、ですが、まあ結局彼女たちはプラネリアムと戦うことになると思うんですよね。これ宇宙から突然飛来した、というような説明だったと思いますが、実は地球で生まれた生物兵器かなにかじゃないかな。(宇宙外来種なら月に到着していてもおかしくないし、そうすると女性だけを月に避難させる意味がない)。生物兵器とルノアが搭乗するクレイプ、自律型多脚砲台などの関連もありそうな気がしますが妄想はここまでにしておきます。
最後に現れる敵が、父性なのか母性なのか、はたまたどちらでもないのか、気になるところですが、刊行予定のないものを期待しても仕方ないかなあ。残念。

余談ですが、文中に「カダフィ大佐がでた」という文があって、さらっと「ああリビアのね」って思ったのですがこの作品1999年刊行で、このタイミングに後からびっくりしました。おおなんだこのシンクロ。ちなみにカダフィ大佐は物語に一切関係ありません。