リアル・スティール

かつては世界チャンプを追いつめるほど強かった元ボクサーのチャーリーは、今は自分の代わりにロボットを戦わせて生計を立てていた。しかし根っからの無計画が災いして借金はかさむ一方。そんなチャーリーの元に、元恋人の訃報が届く。そしてその恋人との間に産まれた、10年あまりも音信不通だった息子が現れた。

今年初映画。にして早々に涙どわー。ストーリーはとても簡単で、もうお約束の展開だって分かりきっているのですが、チャーリー(ヒュー・ジャックマン)とマックス(ダコタ・ゴヨ)の二人の演技がとにかく素晴らしかったです。
例えば二人が初めて対面するシーンは、お互いに距離を置いて声を掛け合うカットが続くのですが、その心理的な距離感が、チャーリーは苛立たしげな様子で、マックスは寂しさと怒りが混じったような表情で、うまくその空隙を埋めているなあと感じました。ちょっと仲良くなるの早過ぎじゃないかなあと思うところもありましたが、二人が少しずつお互いの性格を知っていったり、親子だなあと思わせるシーンがあったり、そういう場面場面で二人がとてもいい顔をするのが印象的でしたね。
マックスにとって「ロボット」という存在は、父親そのものだったのだろうなと思います。スクラップ置き場で拾って来たロボットのアトムと夜、密かに抜け出すシーンで彼はアトムに自分を抱え上げさせるのですが、なんていうかこの子はお父さんにずっとそういう風にやって欲しかったんじゃないだろうかと思うともうたまらなかったですね。最後のチャーリー自らがアトムの分身として戦うシーンでマックスが静かに涙を流すところでも、父親が何かに向かって一心不乱に戦ってる姿をずっと夢見て来たのではないでしょうか。マックス、良い子だよー。
一方、チャーリーにとってもアトムは、かつての自分を重ねる存在でもあったと思います。ボクサーとしては成功できなかったけれど、ボクシングへの情熱はまだ失われていない。それを担う対象がアトムだったのでしょう。アトムというロボットは、チャーリーの外部身体として、マックスの理想として、その二つが焦点を結ぶ位置にあるものだったのではないかと思います。その二人のそれぞれの一部を担うアトムが金属をがいんがいん言わせながら戦う姿に、何度かガッツポーズが出ました。よおぉぉし!やっぱりいいよね、がんがん突き進む金属の身体って。あとロボットがロボットダンスをするギャグがツボでした。そりゃ上手いよな。