宇宙人ポール

SFおたくのクレイヴとグレアムの二人は、カリフォルニアで開催されているおたくの祭典コミコンに参加するため、はるばるイギリスからやって来た。あこがれのSF作家と対面したり、同じ趣向を持つ者たちと楽しく過ごした二人はせっかくのアメリカ旅行をさらに満喫しようとミステリースポット巡りへと向かう。その途中、彼らの目の前を走っていた車が交通事故を起す。驚いて救出に向かった彼らの前に現れたのは、奇妙な生物だった―。

ここ最近のエイリアンものの特徴として、対話不能でやたら凶暴(「スカイライン」「LA決戦」など)か、地球外知的生命体という神秘性をかなぐり捨ててやたら身近な存在(「第9地区」)かという区分がなんとなく自分の中にあります。(「スーパー8」もエイリアンものだけど別にエイリアンでなくても成立しそうな気がする)で、その区分だと今回のこの作品は後者。主人公はやたら身近でフレンドリーで中身がおっさんの宇宙人ポール
ドラマのX−ファイルや過去のエイリアンものの映画では、エイリアンの存在はそれはそれは慎重に扱われていました。ポールはそのナイーブさ、おたく的無邪気さを痛烈に裏切る存在です。卑猥な言葉を連発して、タバコが止められない。(典型的なグレイなので)幼児体型なのにハーフパンツにビーチサンダル、片手にビール瓶。そんな中身が高濃度おっさんであるにも関わらず瞳がとても澄んでいてきれいなんですよね。うわー卑怯だその目。
そしてそんなポールと共に旅をする、見た目は大人中身は無邪気なおたくの二人組、クレイヴとグレアム。彼らはチンピラにからまれて怖い目にあったり、観光客など一人も見かけない人里離れた「聖地」まで車を走らせたり、普通のお気楽なツアー旅行ではなく自分たちの好きなものを求めてちょっとした冒険の旅をするんですね。Alienという言葉には異邦人という意味もあります。この二人もまた、現地の人々から見たら、あるいはおたく以外の人から見たら十分エイリアンなんでしょう。ていうか、この映画に登場する人ってみんなズレてるんですよね。でもそんな風にちょっとズレてたってなんとかやっていけるし、自分からちょっぴりエイリアンになってみるといろいろ大変だけどきっと楽しい。そんな風に思いました。ポールみたいなエイリアンがいたら長距離の単調なハイウェイもとっても楽しそうだ。

最後に登場した「ビッグ・ガイ」には笑いました。いやーそうだよね、エイリアン側から見たらあの人が最大の敵だよ(笑)