数学文章作法 基礎編

今回は実用書。高校生の「僕」と同級生、下級生の女の子たちの物語と数学を交えた「数学ガール」の著者、結城浩さんの「数式を含む文章を書くときに、ひいては文章を書くときに気をつけること」がまとめられた文庫です。この手の本はたくさんある中でどうしてこれを読んだかというと、以前仕事で読んだ「Java言語で学ぶデザインパターン入門」の説明が的確で丁寧だったので、ちょっとこれはすごいなと思ったからでした。

さて、内容ですがやはり以前に読んだ本と変わらず、説明が丁寧で無駄がなく的確でした。実際に数式を含む文章を書くわけではないので、ちょっとした拾い物があればいいなーくらいの気持ちで読みましたが、ブログで感想を書く上でも重要なことが明示されていてためになりました。そういう視点から気になったところを挙げてみます。

  • 2章 基本 2.5 文 

「事実と意見を意識する」
これは映画や小説の感想を書いているときも気をつけなきゃいけないことですね。事実は客観的に見た映画の内容(一字一句間違いのない正確なセリフやシーンに映っていたもの)、意見はそれに対しての自分の主観的な感想、というところかな。「特に,自分の意見を客観的な事実のように書いてはいけません.」はい。

  • 3章 順序と階層 3.2 順序

「具体から抽象へ」
私はよくこのステップを飛ばすなあ、と思って。具体的なシーンやセリフを挙げずに、抽象概念(映画の文法に当てはまりそうなもの)に飛びついて焦って書いてしまう。読んでる人にとっては「はあ?」って感じですよね…。しかも具体→抽象の関連を精査しないから、単なる思い込みであることが多いかも。本当にそうだったかな、と振り返る落ち着きを持ちたいですね。

  • 4章 数式と命題 4.3 読者に手がかりを与える(メタ情報)

ここは少し気になっていて、メタ情報が情報についての情報というのは分かるんだけど、的確な形容詞とはやっぱり違うんでしょうかね。
PはC上にある→点Pは曲線C上にある
この「点」や「曲線」のことをメタ情報と言うのだけど、定義された形容詞と置き換えても良さそうな気がします。というか、メタという言葉は(SFばっかり読んでてあれだけど)とらえどころがなくて難しそうな気がして。いや、でもメタだよな、うーん。

  • 5章 例 5.5 例をつくる心がけ

ここ最近、英語の文法を集中的にやっていて問題を解きまくっています。いるんだけど解いてる割には一向に文法が頭に入っていなくて、どうしようかなあと思っていたんですが、
この本でこんな言葉を読んで、

自分が理解しているかどうか試したかったら,
例を作ってみよ
例を作れたなら,あなたは理解している.
例を作れないなら,あなたは理解していない.

そっか理解しているかどうか例を作ってみれば良いんだ、と思いつきました。数学だけじゃなくこれ、いろいろ使えそうですよ。
ちなみに、英語では
If you want to know whether you understand, make a sample.
If you can do, you understand.
Otherwise you didn't.
です。(多分)



数学とあまり関係ないところを読みましたが、かなり良い「おみやげ」をもらえたと思います。数式を含む文章を書く人には即効性を、それ以外の人には文章を書くということの基本をしっかりと、「読者のことを考える」をちゃんと踏まえている良作でした。いいもの読んだー。


ちょっと内容と関係ない話なんですが、横書きの文庫は今後普及するのではないかな、と思いました。一日の中で目にする文字が縦か横、どっちが多いかと言われたら、ネットや技術書のような横書きの方が多いんですよね。これは人によって違うと思いますが、横書きの方がなんとなく読みやすい気がしました。あ、でもこれ、著者によるのかな。視線移動が多い分疲れそうなものなのに、集中度が違うときがありますね。うーん、なんとなくネットと親和性の高そうなライトノベルなんかはもしかしたら横書きのものが出てくるんじゃないかな、と思いました。


それと、本をあまり読んだ事のない人に特におすすめです。無駄がなく、すっきりとまとまっているのでそれほど手こずらずに読み通せるんじゃないかな。そしてこの「一冊本を読みきった」という感覚はけっこう大事だと思います。「よし、次も読むぞ!」って気になるでしょう?ちょっと経験値が上がったような感じを大切にしてください。でも調子に乗って超大作に挑むのはもう少し後にしてもいいと思います(笑)