アイアンマン3

あらすじ
アベンジャーズの一件から、精神的に不安定になったトニーは眠れない夜をアイアンマンの制作に費やしていた。一方でアメリカ国内のネットワークがすべてジャックされ、「マンダリン」と名乗るテロリストが無差別に爆弾テロを繰り返し国民もまた眠れぬ夜を過ごしていた。アイアンマンである事を公表しているトニーは、国家権力ですら正体を掴む事のできないマンダリンの掃討をメディアから期待される。心に不安を抱えたままトニーは半ば自暴自棄になってマンダリンに宣戦布告する。しかしマンダリンは予想以上に素早く行動し、トニーは研究室と自宅を兼ねた拠点を失い遠方へと命からがら脱出する。孤立無援でアイアンマンという力も失い、病んだ心を抱えたトニーはどん底から再起をかけるのだった。




「私がアイアンマンだ」
2008年公開の「アイアンマン」のラストでトニー・スタークは世界に向けて自らの正体を明かします。そしてこの告白によってトニーはアイアンマンというヒーローである事を背負います。アイアンマンは国家の安全保障を左右するほどの大きな力を持っています。トニー自ら開発したアークリアクターから生み出されるエネルギーがアイアンマンを最強の兵器にするのです。そしてその最強の兵器そのものと一体化するトニーは、正義というものに答えを見いだせず自らが信じるままに力を行使します。トニーはアイアンマンとなることで自分の未熟さをカバーできると信じていたのではないでしょうか。科学技術という系統立った理性の揺るぎない大聖堂に寄り添って、自分自身の愚かさ、幼稚さを克服しようとしたのではないかと思います。今作でトニーはアベンジャーズの一件から不眠症に陥り、一心不乱にアイアンマンを作り続けます。まるで自分自身の身代わりを作り出すように、ある程度の自律性を持たせリモート操作も可能になりました。これはトニーのアイアンマンへの依存だと思います。いつでも(複数あれば一つが壊れても替えがある)、どこでも(リモート操作でどこでも呼び出せる)アイアンマンになれることが心の安らぎだと思い込んでいるんですよね。でもその実、トニーはアイアンマンに執着すればするほどその依存性を高めるだけで、相変わらず人と協調することが苦手だし問題を誰かに相談して共有することもできない。表層を繕えば繕うほど、内面がだめになっていくんですね。自宅を襲撃されて北の地方へようやく逃げ果せたけれど、頼りのアイアンスーツが動かなくなった時の、あの困り果てた姿はその依存度をよく表しているように感じました。それでもトニーは神仏よりも科学技術を頼る男なのでちゃっちゃと考えて動くんですよね。この何もかもなくなってどん底に陥っても、トニーに一つだけ残っているもの。それは「モノを作ること」。心が折れそうな時に彼が必ずすること。アフガンでテロリストに捕まって洞窟に閉じ込められた時にも、解毒の方法が見つからない毒に全身が冒された時も、そして今回、心に傷を負って心地よい環境を追われた時も、トニーはモノを作り続けた。工具も何にもない人の家の納屋で、トニーはモノを作ります。それこそが彼が拠って立つ理由だから。そしてその理由によってアイアンマンそのものに依存したりもしましたが、結局はこの「モノを作る」という行動がトニーを未熟な存在から成長させたのではないかと思います。アイアンマンという力の具象に頼るのではなく、金属を鍛え、ねじを回し、表面を磨き上げる、そういう「アイアンマンを作る」という過程こそが自信に繋がり、仮面越しではない世界と向き合う力になっていく。自分で作ったものを自ら破壊することで、その自信はより深まったはずです。なにしろアイアンマンは何度でも作ることができるのだから。そうして新たなアイアンマンの「かたち」を、アイアンマンとの関係を、トニーは手に入れたのだと思います。


今作はなんと42体のアイアンメンが集結し、さらにプラント船舶という巨大な構造物も登場(でかいもの好きなんですよ)、アクションもよく練られていてもう何度か興奮のあまり映画館のシートから立ち上がりそうになりました。いやーやっぱり、アイアンマンのあの地面に拳を打ち込む決めポーズはいいよね。ほんとかっこいいよね。空中で装着するシーンも良かったし、リモート操作ができるようになったアイアンマンを使った盛り上げ方とかすごく面白かったし、最高でした。それにしてもこのアイアンマンシリーズは、1作目から距離感がめちゃくちゃだよね。アメリカからアフガンまでワンカットで飛んで行くし、今作も1000キロ以上離れた場所からのリモート操作とかあり得ないけど面白いからもうそれでいいです。そしてやっぱりロバート・ダウニー・JR(トニー・スターク)が素敵。この人、女性を見つめる時にほんとに真剣な目するんだよね。どんな女性でも(笑)天才エンジニアで金持ちで、さらに女癖が悪いなんて完璧すぎるそんなキャラクターに、これ以上はないくらいの適役でした。抱いてください(笑)


ちょっと残念だったのがロマンスの方が雑だったなあ。トニーとポッツ、それぞれ元カレ・元カノ出てきてるのになんだかあんまり微妙な感じにならないのね。多少喧嘩もしてるけど、これいつもやってるでしょ?くらいにしか思えなくて全然そわそわしない。なんかもう二人は盤石の関係だろうし、それよりもポッツに甘えるトニーがもっと見たかったよ。一作目のネクタイ締めてもらったり傷の手当てしてもらうトニーが可愛くてすごく好きなんだけどなあ。今回トニーは大人の男になったけど、そういうとこ残しててもいいじゃないの。