アナと雪の女王


!!! ネタバレを含みます !!!





ストーリーについて:独りでも、誰かとでも

まずは姉エルサの能力について。これ妹のアナにはないし物語の中で明確にその能力の詳細については説明されてないんですよね。生まれながらに持っていて、家族ですら持つ者と持たざる者の差があるもの。それって才能ってことだと思うんですよね。自分ですら制御できないほど溢れる能力。
エルサは歴代ディズニープリンセスの中でも指折りの攻撃力ですよ(笑)めっちゃ強いぞ、雪の女王。まあそれはいいとして、この才能のためにエルサは苦しみ、唯一の肉親であるアナとも心が離れてしまう。でも冒頭でこの地方の人々は氷を切り出す仕事をしています。それが貿易として成り立っているかは分からないけど、彼女の才能はこの産業と直結しているのではないかと思うんですよね。だからクリストフとはいいビジネスパートナーになるはず。この映画、いわゆる男女の恋愛を描かなかったところがすごく面白いけど、そういう視点で観たらアナとクリストフではなく、エルサとクリストフはそういう関係になるんじゃないかな。
才能を活かしてばりばり仕事をするエルサが素直な自分でいられるのは一人でいる時。それね、すごく分かるんですよ。そういうときは本当に誰にも邪魔されたくない。Let it goではなくて、Let me go(ひとりにしておいて)て感じ。自分の能力をフルに発揮する瞬間の、あの主題歌の時のエルサは本当に輝いてて素敵でした。もう世界をばりばりに凍らせるといいよ!
一方で妹のアナのこともなんとなく分かるんですよね。惚れっぽいというか好奇心旺盛というか。誰かのことに興味を持たずにいられない。彼女が長く閉鎖された城から飛び出して王子に出会うシーンはそんなワクワクに溢れています。それにトロールたちにクリストフの仲を茶化されるときの、面白いものに接している時の喜びとかがね、すごくいい。
彼女たち姉妹は一人で在ることと誰かと在ることの喜びを素晴らしく歌い上げます。そしてそれは互いに反発しないんですよね。どっちで在ってもいいし、その時々で変わっていいと思う。ありのままの自分で在れば。
ただ、どちらにしても強度が必要だと思うんですよね。一人でいると他者の物語の存在がよく分かります。それはたぶん、誰かといるときでも変わらないはず。誰の物語も否定せず、そのままで在ることはすごく難しいことでもある。エルサが自分の能力を制御できないように、アナが初対面なのに心奪われてしまうように。そういうものに揺るがない強度を得るのはきっととても時間がかかると思うけど、それなりの年になると得てしまうものなんじゃないかな、と思います。

キャラクターについて

日本のアニメが苦手なのって目が大きくて不気味だからなんですが、この映画、よく観たらけっこう目が大きいですよね。不気味だとは思わなかったけど。今作はわりと女子がアクションをこなしたりと、男女の境界をわざと曖昧にしているところがあったと思いますがその分、衣装や顔のデザインはかなり古典的なスタイルになっていたんじゃないかなと思います。まあエルサはあんな素敵なドレスでがっつり踏ん張りますからね。男子も正面切って果敢に戦って状況を切り開いていくというよりも、その場その場で控えめに活躍するような感じでしたね。よく考えたらディズニーアニメの男性って難しいですよね。活躍しすぎてはいけなくて、女性という花をを支える茎に徹しなければならないし。かといって控えめすぎると存在感ないし。今作のクリストフはいわゆる王子はありません。彼は従者として彼女たち姉妹の物語に参加しているんですよね。うーん、男女の恋愛を敢えて描かないことはすごく面白いと思ったけど、そうするとこっちが片手落ちのようになってしまうなあ。彼には生まれた時から一緒にいるトナカイのスヴェンがいるけど、その関係がもう少し彼女たちの愛情表現の補強になっていたら良かったな、と思いました。というか、彼らが雪嵐のなかを疾走するシーンがそういう意味なのかな。あれはすごく良かったですね。
あとキャラクターでは雪だるまのオラフが、微妙なところでグロを回避する、奇妙な緊張感があって面白かったです。なんだろうちょっと怖いんだよね、あのデザイン(笑)

歌について

英語版で観ました。やっぱり歌のシーンはすごく迫力があって良かった。エルサの不安な表情から輝くような笑顔へ、そして最後の自信に満ちた表情に至るまで、歌唱力と相まってそれだけでドラマを生み出していたと思います。予告でこのシーンをフルで流してたの、観たんですよね。他の、子ども時代から成長していく時の、雪だるまを作って遊ぼうとする時の歌もすきですね。