アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う

アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う 英国パラソル奇譚

アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う 英国パラソル奇譚


あらすじ
吸血鬼や人狼、ゴースト、そして人間が共存する19世紀ロンドン。アレクシアは、異界族(吸血鬼や人狼など)の能力を無効にする「魂なき者(ソウルレス)」という希有な存在だった。彼女は人狼団のトップの妻という立場のかたわら、女王陛下直属の影の議会の議長を務めている。そんな折り、ロンドン中の吸血鬼、人狼の能力が一斉に消え、ゴーストが除霊されるという騒ぎが起こる。まるでアレクシアの能力が広域に作用したかのような現象に、彼女は自ら捜査に乗り込む。



前作に続き、強気で現実主義的なアレクシア女史がどたばたキュートに活躍するパラソル奇譚第二弾です。いやー面白かった!
今回の事件の鍵となるのはアレクシアが持っている吸血鬼や人狼を人間に戻し、ゴーストを除霊する能力です。異形の者たちの能力を打ち消す反能力とも言うべきこの力が、なぜかロンドン中に広がっている。原因を突き止めるためにアレクシアはお荷物の親友アイヴィや生意気な妹、使えるのか使えないのか分からない使用人のタンステル、夫であるマコン卿が紹介した怪しげな男装の麗人マダム・ルフォーらと共にスコットランドを目指して旅立ちます。前作はずっとロンドンの中でのお話だったので、今回は新しい舞台での物語ですね。また、飛行船や長距離無線通信機エーテルグラフなどの機器も登場してスチームパンク的な魅力があって素敵でした。ちゃんと活用されている感じがすごくいいんだよね。ガジェットと言えばアレクシアのパラソルもアップグレード(笑)いろんな小道具が仕込まれてなんかもう暗殺兵器のようになってるけど、やっぱりアレクシアにはパラソルがないとしっくりこないんですよね。
ただ、そういう装置やガジェットはとても面白かったけど、肝心の謎の部分の説明については若干説得力不足な点が少し残念でした。これは追々補足されるのかなあ。説明不足というか、そもそもスチームパンクの世界観にハードSFみたいな設定や説明は不要だと思うんだけど、もうちょっと堂々とはったり効かせても良かったんじゃないかな。


それにしても前作から相変わらずどたばたしていて物語はとても面白かったです。
アイヴィは他の人と婚約しているにも関わらすタンステルと恋仲になっているし、生意気な妹のフェリシティは暇つぶしにその仲にちょっかい出すし、一方マダム・ルフォーはアレクシアにそこはかとなくアタックしてきて百合っぽい感じになってるし、結婚後もアレクシアは悩みが尽きないのね(笑)それにしてもちょっと不思議なのはどんな強敵でも敢然と立ち向かうアレクシアでも、妹や母親に対してはどこか気弱な感じなんですよね。うーん、やっぱりオールドミス歴が長いせいか結婚しても引け目を感じているのかなあ。もっとがつんと言ってやればいいのに。
もう一つはアイヴィの許されぬ恋とアレクシアの結婚について。アイヴィは政治的な愛のない結婚なんてできないわ!とメロドラマさながらに涙で訴えつつ、人狼団のトップに見初められて結婚したアレクシアを貶むんですよね。オールドミスだったあなたにはそれしかないから仕方ないけど、私には耐えられないわ!と。こいつめっちゃ失礼なやつだなー。でも物語を読んでいればマコン卿とアレクシアがらぶらぶなのは分かり切っていて(何回セックスしてんですかっ)、ソウルレスなアレクシアは普通の人とは愛情の感じ方も表現方法も違うし、人狼の夫もまた人間とは異なる人狼なりのやり方をしているだけなんですよね。
たった一つのやり方でしか、誰かを愛することはできないの?
それはマダム・ルフォーについても言えることだと思うんですよね。アレクシアの不幸は自分の幸せが他人に理解されない、ということなんでしょうね。ま、あんまり気にしてないみたいですけどね。



さて次回は、今までちらちらと登場していたアレクシアのお父さんのエピソードがメインになるようです。なんだか(いろんな意味で)すごい人みたいだけど(笑)楽しみ!



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