これなら映像化できる(かもしれない)円城塔作品4選


先日伊藤計劃さんの著作「虐殺器官」、「ハーモニー」、「屍者の帝国」の3作品が劇場アニメーション映画として製作されることが発表されました。一度に三作品だなんてすごい!こんなお楽しみがいっぺんに来てしまってその後大丈夫なんでしょうか。うれしいけど幸せがこわい(笑)


さてさて。「屍者の帝国」は伊藤計劃さんの作品でもありますが、共著者でもある円城塔さんの作品でもあります。ということはつまり、円城塔作品の初の映像化でもあるんですね。
理数系で難解、なんとなく分かるけど人に説明するの無理、おとぼけた文体がかわいくて意外に女子力高い、など主に私に定評のある円城塔作品。その中からこれならなんとか映像化できそうな作品を勝手に選んでみました!

オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)

オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)

ほぼ一年に一度、空から人が降ってくる町、ファウルズ。単調で退屈な、この小さな町に流れ着き、ユニフォームとバットを身につけレスキュー・チームの一員となった男の物語。
(文春文庫版オブ・ザ・ベースボール より)


これは「世にも奇妙な物語」でドラマ化!もうこのあらすじだけでこのドラマシリーズにマッチしそうな感じです。もうねータモさんのナレーションが想像できそうw
小説はどこにも行けない男の、静かな焦燥のようなものとクライマックスの吹っ切る爽やかさが素敵な作品です。このドラマシリーズなら「どうして人が降ってくるのか」とか「男の目的は何か」という物語上の説明はある程度省いても観る側の了解は取れるんじゃないかなあ。「世にも奇妙な物語」でそういうリアリティに突っ込む人ってあまりいなさそうだし。でもこの小説、物語は不条理なんですが、きちんと人が落下する時の物理や人が降ってくる頻度の数学的説明がされています(笑)さすが理系。そのあたりもドラマに盛り込まれるときっと楽しいと思うんですよね。ちなみに主人公の男の役は…そうだなあ、綾野剛さんとか良さそうですね。一生懸命走る姿が様になりそうです。

01 Bullet (Self-Reference ENGINE より)

Self-Reference ENGINE

Self-Reference ENGINE

彼女のこめかみに埋まっている弾丸はあさっての方向から飛んで来た。


この作品はSREの連作の中の一つですが、破天荒な女の子リタ、その子に片思いの理屈っぽいジェイムズ、そして語り部のぼく。この3者のイメージはジブリ作品が似合いそうです。なんかジェイムズが「魔女の宅急便」のトンボみたいなイメージなんですよね(笑)
時間軸がばらばらになってしまった世界のなかで、出会っていないし二度と出会わない人たちのお話。なんですが、まあそれをアニメで描くのはとても難しいような気がするので、この三人がどたばたする片田舎の日常が観てみたいですね。

墓標天球 (後藤さんのこと より)

後藤さんのこと (ハヤカワ文庫JA)

後藤さんのこと (ハヤカワ文庫JA)

少女、少年、そして男が天球で交差する、幻想的な物語。


これは漫画で!前にも書いたけど文庫版「後藤さんのこと」の表紙を描いている、市川春子さんの絵柄で読みたいです。彼女の描く女の子がこの少女にすごく合っていると思うんですよねー。

「遅い」と少女は一言を置く。あまりの暇さ加減に、少女が思わず登り続けてしまった、途方もなく巨大な螺旋階段。三つの階段が入り組み混じり、互いの道を交叉させてまた離れる。二枚の扉が直角に肩を接する踊り場の端、少女はやはり、足を垂らしてぶらぶら揺らす。

なんかコマが思い浮かびそうじゃないですか。

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

道化師の蝶

道化師の蝶

道化師の蝶

謎の作家「友幸友幸」の隠された作品を探すエージェント、世界中を飛び回る実業家。どの系統にも属さない蝶の物語。


説明するの難しいな。これはJ.J.エイブラムス監督で実写化!はちょっと難しいですよね(笑)まあJ.J.エイブラムス言いたかっただけですけど。これは実写よりもアート系アニメーション映画の方が向いてるかなあ。「イリュージョニスト」の監督とかで。小説自体はメタ的な構成の物語なんですが、そのあたりさらっと飛び越えて行けそうな感じがしますね。日本のアニメーションだとちょっと主観がはっきりしすぎて難しそう。キャラクターものでもないし、「物語」が主役の物語だと思うんですよね。アニメなら円城塔作品特有のちょっとおとぼけた、人種や性別が曖昧なキャラクターが似合いそうな気がします。

イリュージョニスト [Blu-ray]

イリュージョニスト [Blu-ray]


と、こんな感じです。
なかなか人におすすめしにくい作風なんですが読んでみるとけっこう面白いので、こういうかたちで紹介してみました。気になる作品がありましたら是非。