ビスケット・フランケンシュタイン

ビスケット・フランケンシュタイン (メガミ文庫)

ビスケット・フランケンシュタイン (メガミ文庫)

かわいいは創造(つく)れる

読んでまず思ったのはこの作品そのものが「つぎはぎ」であるということ。この作品の主人公、ビスケと同じように、生物学、コンピュータ、哲学、心理学、医学、だけでなくオカルトやそれはSF的にどうだろうwと言ったトンデモまで、とにかくごちゃまぜでつぎはぎ。出て来たネタは放置しっぱなし、かと思えば予想もしないところで接合されていたりして。個々のつながりを見ていくととても奇妙で、全体を見渡すとなぜかそれがモザイク様のかたちを描いているように見えてさらに奇妙。そんなお話でした。ただのネタの羅列じゃないんだよね。きちんとちぐはぐであるように巧妙に計算されている。
そしてなによりとてもかわいい。その「かわいい」は、フォトショでめちゃくちゃ手を加えた写真のようなグロテスクさの一歩手前と、おしゃべりな女の子(ビスケ)の天然ものの「かわいい」との、やっぱり奇妙な合成にあるんですよね。
このビスケのおしゃべりがまた、あたかもこの作者が心底思っていることが止めどなく出てしまったかのような、そんな自己満足のグロテスクさが漂っていてそれがこの作品の匂いに混じっているんですよ。それが一見ビスケットなどのお菓子の甘い香りに紛れているというか、どんなにいい匂いも強すぎれば悪臭になるように、どんなにグロテスクな匂いもそこはかとなく漂うとアクセントになってしまう、そんなギリギリのところをついている。


意識とはなにか、物語とはなにか。かわいい怪物の女の子が問いかけ、自ら答えを創造していく。とびきりキュートで強い物語でした。おもしろかった!