チャイルド44 森に消えた子供たち


小説がとても面白くて映画化を楽しみにしてました。小説を読んだ時の感想を探してみたけど、あれ?感想書いてない…。うそーあんなに面白かったのに!あれか、面白すぎて2回読もうとして結局読まなかったパターンだ。えー…。


簡単にあらすじを説明すると、第二次世界大戦後のソ連(ロシア)で国家秘密警察の捜査員を務めるレオ・デミドフは、友人の息子が列車事故に巻き込まれた事件を担当するが、それはどう見ても「殺人」としか言いようのないものだった。しかし、「楽園に殺人はない」という国家の思想により、その事件は真実が明らかにされないまま隠蔽されるが、犯人は捕まらないまま次々と「事故」が起きる。犯人を野放しにしておけないレオは捜査に踏み切るがそこには犯人だけでなく、強大な敵「国家」が待ち受けていた。


政治思想の元に個人の人生だけでなく、殺人という現実まで歪めてしまう国家の恐ろしさ。その全方向敵!の四面楚歌の中で奮闘するだけでなく、妻のライーサとの夫婦の関係にも波乱が押し寄せたり、捜査員時代からのライバルが嫌らしく絡んできたりと波瀾万丈の物語です。
で、映画版ではこのイケメン捜査員のレオを、今をときめくトム・ハーディ、その美人妻ライーサをノオミ・ラパス、レオの実質的な協力者となる民警の署長、ネステロフをゲイリー・オールドマンが務めています。すごい豪華キャスト!
特にこの映画でぴったりだったのは、ライーサ役のノオミ・ラパスでしたね。ライーサは小学校の教員をしているごく普通の女性でレオの闘争に巻き込まれるうちにいろいろと大変な目に遭うのですが、そういう時に見せる必死さ、強さがよく出ていて素晴らしかった。大好きな女優さんなので出演するだけでも嬉しいけど、本当に適役でしたねー。ただちょっと一般人女性にしては強すぎるんじゃないかと思うようなシーンもあったけど(笑)、夫に対する秘めた感情の表現とかすごく良かったです。ラストのレオと共に待合室で待っているシーンはすごく綺麗でした。ほんと強くて美しい女優さんだ。
ちょっとだけ残念だったのは、主演のトムハでしたねー。この物語、ソ連が舞台だけど登場人物は皆英語なんですよね。まあそれはいいんです。小説も英語で書かれてるくらいだし。でも発音をロシア語っぽく訛らせているところに違和感があって、特に彼の発音や言葉使いがちょっと変だなあと思いました。そこは普通の英語で良かったんじゃないかなあ。標準語の人がむりやり関西弁しゃべってるみたいで落ち着かなかったよ…。それと小説では呑気な天然イケメンのイメージがあったのですが、映画版はわりと粗暴さ前面押しというワイルドな感じでした。トムハのイケメン具合が封印されてるようで、うーんもうちょっとかっこいい感じでも良かったんじゃないかなあ。
一方でアクションシーンはとても良かったですね。列車の中で大乱闘だったり、諜報員でもない素人のライーサを連れての地下鉄構内の逃走だったり、すごくドキドキして楽しかったです。
そうこの物語、敵陣のまっただ中に飛び込んで証言を得たり、重要書類を探して来たりとステルスゲームさながらの緊張感があるところがめちゃくちゃ面白いんですよね。


それと、いつの間にか誰かのその場しのぎの言動で政治犯に仕立て上げられているという、おそロシア感(笑)もよく出ていました。通勤途中で急にさらわれても誰も助けてくれない絶望感とか、家族の間でさえ欺瞞が満ちている笑顔の裏にある緊張感とか、まあフィクションだから面白がれるものですが「うわー…こわーい」とお化け屋敷感覚で楽しめました。



ネタバレ







小説と映画で少し違う部分もあったので書いておきます。映画は映画で面白かったけど、物語は小説の方が好きかなあ。まずは犯人とレオとの関係。小説では実の兄弟で、飢餓に瀕した子供時代に生き別れた、という設定だったと思います。犯人が殺人鬼になったあたりのエピソードはだいたい同じだったと思うけど。あ、この犯人役もすごくイメージ通りでした。で、最終的にレオはその弟が犯人だという真実を知るのですが、小説ではなぜかこのシーンで彼らはトランプゲームをするんですよね(笑)子供の頃を思い出して、レオは弟に脅迫されながらトランプを挟んで向かい合う、というもの。なぜかこのシーンに妙な耽美さを感じていてすごく期待していたんですけど、映画版ではまったくの他人の設定になっていて(ただ、犯人は「戦争の英雄」として報道されたレオのことを一方的に知ってはいますが)あっさりカットされてました。わーん。
あと捜査員をしている時に容疑者の拷問に立ち会ったレオが、反逆罪で捕まり正に自分が行ってきた拷問にかけられる、というシーンがあるのですがここはさらっとだけ描かれてました。今回もトムハ猿ぐつわ咬まされてて、最近観る度にそういうの多いですな(笑)