コロロギ岳から木星トロヤへ

北アルプスで太陽観測の仕事に就いている天文学者の百葉(ももは)は、突如観測所に突っ込んで来た巨大生物に救助を求められる。カイアクと名乗ったその生物は空間ではなく時間の中を移動する、全長200年超の生物だった。先端にひっかかった200年後の世界へ向けて百葉たちはメッセージを送るが、そこは木星前方トロヤ群の小惑星の一つだった。


さくっと読める分量の中に天文学、時間SF、宇宙物理、さらっと腐女子要素(笑)を詰め込んだ、びっくりの傑作。うまい!(いろんな意味で)
そういえばキャラクターとして直接的に腐女子が登場する小説って初めて読んだな。「おい自重w」と思いながら読みました。まあ気持ちは分かる。一方、200年後のトロヤで悪戦苦闘する少年2人組は、懐かしい感じのSF小説ぽくて楽しかったです。アシモフの「われはロボット」に出てくる2人組、ドノバンとパウエルみたいな感じ。どたばたスラップスティックに収まるかと思えばさらっと怖い展開になったりして、いろいろな変化球を楽しめる小説でした。同作者の「天冥の標」もそうだけど、基盤をがっちりと固めながらいろいろな展開を繰り出してくるの、本当うまい。