チャイルド44

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

そういえば感想を書いてないなと思って読み直しました。が、なんなんだろうあの吸引力。この前映画は見たけど読んだのはずいぶん久しぶりだったのに、吸引力が落ちない(笑)思わず時間を忘れて一気に読んでしまいました。国家へ反逆しながら、殺人犯を追いかけながら、妻とももう一度関係を築き直して。ミステリー、ロマンス、ゲーム的なスリルがこれでもかと詰め込まれた最高のエンターテイメント小説ですね。どれも単体でストーリーにしてもおかしくないのに、それをすべて詰め込み、すべて絡める構成力がすごい。主人公レオは、超越的な国家権力を有する捜査員であり、ハンサムで美人の妻を持つなど男性としても申し分のない完璧な人間なのですが、ハンサムを除いて(笑)すべて失うんですよね。国家の言いなりにではなく、一方的で盲目的な妻への愛情ではなく、一つ一つ彼自身の手で取り戻していく。ハンサムとしっかり描写されているから脳内妄想も捗るんだよね。そしてさらにハンサムで邪悪なライバルが登場したりして、もうだめだいろいろどうにも止まらない(おい自重w)
状況だけでなくキャラクターを追いかける視点がとても読みやすくて、ついつい読んでしまうのに、そこに仕掛けられたトリックにびっくりする誘導の巧みさ。素人の奥さんをつれての逃避行や、走行中の列車からの脱出など、こんなゲームやってみたい!と思わせるような緊迫のシーンの惜しみない描写。読んでいてこんなに鮮明にシーンを思い描きながら読むのはなかなかないですね。