アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う

アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う 英国パラソル奇譚

アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う 英国パラソル奇譚


好奇心旺盛、身重の身体を抱えながら我が道を往くレディ・アレクシアの冒険活劇も4作目です。前作に続き、妊娠中のおっきいお腹を抱えてよたよたしながらもはちゃめちゃなアクションをこなしております。おー大丈夫か(笑)この日本語版の表紙だと清楚な感じのキャラクターに見えますが、わりと骨太でぽっちゃりしてて色黒の、とても活力のある女性なんですよね。そんな彼女ですがれっきとした英国淑女なので、主語が「あたくし」ってとこがすごく好きです。最近のキャラクターではなかなかいなさそう。


さて。今作ではアレクシアの母親になるまでのどたばたに絡めて、前作に登場していたマダム・ルフォーがメインとなるストーリーです。マダム、というだけあってルフォーには一人息子が居るのですが、その子を巡る母親の戦いなんですね。母親の心情、というものが分からないけれど、そういうシンプルな動機で彼女は物語を駆動します。そう、私には母親がどういうものか分からない。けれどこの物語を楽しめるのは、アレクシアもまた母親ってどういうの?という気持ちのまま、それでも友人でもあるルフォーのために駆け回るんですよね。妊娠しているなら母親らしい気持ちは芽生えそうなものですが、アレクシアはソウルレスという、人間でも異界人でもない、ちょっと変わった人なんですね。それで彼女は人の気持ちを共感的につかむことがとても難しい。その代わりアレクシアには素晴らしい洞察力と豊かな想像力がある。彼女はそれを駆使して様々な人々とコミュニケーションをとっているのだと思います。


そしてアレクシアは我が子に対しても「ちび迷惑」だなんて名前をつけてお荷物扱いなんですが、決して邪魔にはしないんですよ。彼女が持っている、自分とは違う人たちとなんとか上手くやっていく能力を使って我が子もそれなりに大切にしているんですよね。まあもうちょっと身体を大事にした方がいいと思ったけどね(笑)登ったり降りたり、お腹の赤ちゃんも大変だよ。


前作からソウルレスであるアレクシアを通して、「恋愛って何なんだろう」「母親って何だろう」というものが描かれていると思います。シンプルなテーマなんだけど、アレクシアの場合は一般的に理解されているその外側なんですよね。それを外から見てみると、固定観念に囚われない豊かな視野で見ることができるんじゃないかと思います。うーんうまく言葉にできないんだけど、一般化されてるのってごく一部でしかないよな、っていうこと。アレクシアが型破りだっていうことですね(笑)


さらに今作はスチームパンク的なガジェットが大活躍でした。いやーこういうのはアニメで見たいねえ。アレクシアのパラソルもどんどんグレードアップしてるし。


次回でこのシリーズも終わりのようです。が、スピンオフみたいなのもあるらしいのでちょっと楽しみ。