ローガン

観てきました。
実はこのローガンことウルヴァリンのシリーズはちゃんと観たことがなくて(ちなみにX-メンも微妙だったり)、大丈夫かなと思ったのですが、一つの映画として完成している部分が大きくてそれほどお話に迷うところはありませんでした。
まあほんとはね、ちゃんと過去作をチェックして、関連のエピソードを押さえてから観た方がいいんだろうけどね。そんな感じですがちょっとまとめてみます。

継承するものと引き受けるものと

まずこの映画を観たきっかけは、「メタルギア」シリーズの製作者である小島秀夫監督のエッセイがきっかけでした。今作でウルヴァリンことローガンの物語は終わり、新たな物語へと引き継がれていきます。メタルギアソリッド4ソリッド・スネークの物語が終わったように。物語を終わらせる物語、というジャンルがあるのかどうかは分かりませんが、それがどれだけ大変なことかをゲームを通して体験していたので、ちょっと気になったんですよね。


この映画には一人の少女が登場します。驚異的な身体能力と万物を切り裂く鋼鉄の爪を持つ少女、ローラ。彼女は過酷な環境を生き延び、ローガンに出会った時には殺人を犯しており、とても無垢とは言えない子供です。同じ能力を持つローガンは年老いかつての強靭さの名残はまるでありません(そうは言うものの一般人には全然引けはとらないけど)。
世代交代が目の前にあるわけです。もうローガンはあまり役に立たない。自分と同じ能力を持ち、なおかつ若い個体が存在するのであれば、静かに去るのがよいことなのでしょう。
そしてもう一人、同じ能力を持つ個体が現れます。凶暴さを強化された、ローガンのコピー。ローガンとローラは彼と彼を指揮する組織に追われながらアメリカを縦断します。
ローガンとコピーの戦いは正に死闘ともいうべきもので、肉体的に衰えているローガンは苦戦を強いられます。けれど彼は本能なのか、一度も逃げるような素振りや怯えた態度を見せない。自分自身の影のような存在と血みどろの闘争を、見せるつもりはなくともローラはそれを見ているんですね。
幼いながらに人を殺してしまったローラは一生その消えない罪を背負っていかなければなりません。それはローガンも同じこと。映画「シェーン」から引用されたセリフにもあるように、償いきれないものだとして厳密に扱います。ローガンがローラに伝えられることは、その罪と向き合う姿勢なのだろうと思うんですよね。それはコピーには伝えられない、ミームの正統な後継者にしか伝えられないこと。
逃げずに戦い、生き延びる。この映画はただただそれだけを直視した物語のように思います。